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スタッフが1人辞めた。空いたままの1ヶ月は、いくら持っていくのか

2026年8月26日

「今月いっぱいで辞めさせてください」

このLINEが来た日の夜、まず開くのは求人サイトだと思う。掲載プランの比較を始めて、写真を撮り直そうと考えて、そこで一度手が止まる。またあの費用がかかるのか、と。

ただ、その夜に本当に見なければいけない金額は、求人費のほうではない。明日から空いたままになる、その1席のほうだ。

以下、業態を1つに固定して書く。美容室、スタイリスト6名の1店舗の話をする。アイサロンやネイルは1人あたりの売上も材料費の重さも違うので、この記事の数字はそのままでは当てはまらない。

空いた席の1ヶ月は、318,000円だった

前提を先に置く。

  • スタイリスト6名
  • 1人あたりの月の技術売上:600,000円(6名の平均。特定の誰かの数字ではない)
  • 材料費率:7% → 42,000円
  • 1人あたりの月の支給額(額面):240,000円(6名の平均)

材料費率の7%は、KUROCOの現場実感による目安で、公的な統計ではない。自分の店の実際の率が分かるなら、そちらを使ってほしい。

この店で1席が1ヶ月空くと、店に残らなかった金額はこうなる。

600,000円 −(材料費 42,000円)−(支給額 240,000円)= 318,000円

売上60万円がまるごと消えるわけではない。その人に払う24万円も、材料費の4.2万円も、同時に出ていかなくなる。差し引きで318,000円。 ここを丁寧に引かずに「月60万円の穴が空いた」と思い込むと、慌てて判断を間違える。

ただし、この318,000円からは家賃も水道光熱費も引いていない。 そしてこの2つは、席が空いていても1円も減らない。だから店の痛みとしては、318,000円は上限ではなく、下限に近い数字だと思っておいたほうがいい。

3ヶ月空くと、954,000円になる

次の方が入るまで、どれくらいかかるだろうか。

求人を出して、応募が来て、面接をして、いまの店の引き継ぎがあって、入店。1ヶ月では、まず埋まらない。3ヶ月と置いてみる。

ただし、この3ヶ月に根拠はない。 動かす起点を作るためだけに置いた数字だ。2ヶ月で埋まる店もあれば、半年かかる店もある。自分の店が前回どれくらいかかったかを思い出して、そこに置き換えてほしい。

318,000円 × 3ヶ月 = 954,000円

一方、求人にかけているお金のほうも数字にしてみる。月6万円をならしてかけていて、この1年で3人採用できた店なら、

60,000円 × 12ヶ月 = 720,000円 ÷ 3人 = 1人採るのに240,000円

並べると、こうなる。

金額
1人採るのにかかっているお金240,000円
席が3ヶ月空いたままだった場合954,000円(約4.0倍

「求人費が高い」と言い続けていた店で、実際に高かったのは空いている時間のほうだった、ということが起きる。掲載プランを1つ上げるかどうかで2週間悩む間に、318,000円が過ぎていく。

現場では、この数字はもっと悪くなる

ここからは、計算の外側の話をする。店に立っていないと見えない部分で、ここが一番大きい。

「いまいる子たちで埋めるから大丈夫」は、最初の2週間だけ本当になる。

辞めた方の予約は、残ったスタッフが引き取る。最初の2週間は、みんな少し早く動いて、なんとか回る。売上も、ぱっと見は落ちない。オーナーは「思ったより大丈夫だった」と思う。

崩れるのは3週目からだ。

引き取った分だけ、1人あたりの予約が詰まる。詰まると、次回予約を勧める余裕がなくなる。「じゃあまた連絡します」で帰るお客様が増える。これは今月の売上には出ない。2ヶ月後、3ヶ月後に、来店の間隔が延びた形で出てくる。

そしてもう1つ。1人抜けた分の負荷は、残った人にそのまま乗る。 休憩が取れない日が続く、閉店後の練習時間が取れなくなる、次回予約を勧める余裕がなくなる。これは気持ちの問題ではなく、1日の中で使える時間が足りていないという話だ。その状態が続けば、次の退職の理由になり得る。 何ヶ月で、何人に一度そうなるかは、店によって違う。

だから、318,000円という数字を出す意味は「損した額を知る」ことではない。募集をかける前に、いま何が起きているかを見る順番を作ることにある。

雇用と業務委託では、この数字は別物になる

ここは働き方と契約の話に触れる。雇用か業務委託かは、契約書の題名ではなく働き方の実態で決まる。 金額の出し方が変わるという話であって、契約の形を選ぶ話ではない。実際の契約内容によって変わるので、自分の店の契約書を見て確認してほしい。

上の318,000円は、雇用のスタッフを前提にした数字だ。席が空けば、支給額240,000円も出ていかなくなる。だから差し引き318,000円になる。

業務委託の場合は、引く金額が変わる。歩合50%・月60万円を作る方であれば、出ていかなくなるのは報酬の300,000円のほうになる。同じやり方で置き換えると、

600,000円 − 42,000円 − 300,000円 = 258,000円

さらに、材料費と席料をどちらが負担する契約かでも変わる。材料費をその方が負担している契約なら、店が失うのは材料費を引く前の金額になる。席料をもらう形なら、失うのは席料の分だけになる。

言いたいことは1つ。雇用の方と業務委託の方を混ぜて「1人あたりの平均」を出すと、この計算は壊れる。 同じ「1人」でも、中身がまったく違うからだ。分けて出すこと。 ここだけは面倒でもやったほうがいい。

辞めると言われた日に、やること3つ

優先順位をつける。上から順にやる。

1. その日のうちに、空席1ヶ月の金額を出す。

売上・材料費・支給額の3つがあれば出る。5分で終わる。この金額を持っているかどうかで、次の判断の速さが変わる。

2. 求人を出す前に、求人票の抜けを1つだけ直す。

前回と同じ求人票をそのまま出すと、前回と同じ結果になる。応募する人が知りたいのに書いていない項目は、自分では気づけない。1つでいい。

3. 残ったスタッフの3週目に、先に手を打つ。

シフトを組み直すのは1ヶ月目ではなく、崩れる前の3週目。ここを後手に回すと、2人目が出る。

やらないこと:紹介手数料の高い媒体を、金額を出す前に追加すること。

「早く埋めたい」は正しい。ただ、954,000円という数字を持たずに追加すると、「高いから」で途中でやめて、結局どちらも中途半端になる。数字を出してからなら、30万円の紹介手数料を払う判断も、堂々とできる。

この計算は、1回では終わらない

サロン電卓の「求人費・空席」の道具は、求人費が月60,000円・この1年で3人採用・スタッフ6名の店で、1人採るのに240,000円席が1つ空いている1ヶ月を318,000円と出す。次の方が入るまでの月数を動かすと、その間に店に残らなかった金額も一緒に変わる。3ヶ月なら954,000円、1人採るお金の約4.0倍。

この道具には、何ヶ月いてほしいかという目標の線は入っていない。 それは店ごとに決めることで、画面が決めることではないから。

そして、この数字は毎年変わる。採用できた人数が変われば1人あたりの金額が変わるし、平均売上が上がれば空席の1ヶ月も重くなる。1回出して終わりにはならない。 1年に一度でいい、同じやり方で出して並べてみると、自分の店の採用が良くなっているのか悪くなっているのかが、初めて見える。

出しておくと、次に「辞めます」と言われた日の夜が、少しだけ短くなる。

この記事で使った道具
🪑 求人費・空席シミュレーター

1人採るのにかかっているお金と、席が1つ空いている1ヶ月の金額を計算。次の方が入るまでの月数を動かすと、その間に店に残らなかった金額が出ます。

登録なしで、無料でお使いいただけます。

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