求人サイトを開く前に。今夜のうちに紙の裏へ書くのは、どの3つですか
2026年9月12日
美容室の話です。スタイリスト6名。
「今月いっぱいで辞めさせてください」
このLINEが来た日の夜のことです。
まず開くのは求人サイトだと思います。掲載プランの比較を始めて、写真を撮り直そうと考えて、そこで一度手が止まります。またあの費用がかかるのか、と。
ただ、その夜に本当に見なければいけない金額は、求人費のほうではありません。明日から空いたままになる、その1席のほうです。
その1席がいくらなのかは、紙の裏に3つ書けば出ます。5分です。この店では、318,000円でした。
以下、業態を1つに固定して書きます。美容室、スタイリスト6名の1店舗の話です。アイサロンやネイルは1人あたりの売上も材料費の重さも違うので、この記事の数字はそのままでは当てはまりません。
紙の裏に書く3つは、売上・材料費・支給額です
書くのは、この3つだけです。
- 1人あたりの月の技術売上:600,000円(6名の平均。特定の誰かの数字ではありません)
- 材料費率:7% → 42,000円
- 1人あたりの月の支給額(税金や社会保険を引く前の金額):240,000円(6名の平均)
材料費率の7%は、公的な統計ではありません。KUROCOが運営する美容室3店舗で、材料費を売上の7%以内におさえていて、その線をそのまま目安として置いています。自分の店の実際の率が分かるなら、そちらを使ってください。
3つ並んだら、引き算を1回します。
600,000円 −(材料費 42,000円)−(支給額 240,000円)= 318,000円
これが、1席が1か月空いて、店に残らなかった金額です。
売上60万円がまるごと消えるわけではありません。その人に払う24万円も、材料費の4.2万円も、同時に出ていかなくなります。差し引きで318,000円。 ここを丁寧に引かずに「月60万円の穴が空いた」と思い込むと、慌てて判断を間違えます。
ただし、この318,000円がまるごと消えるのは、その席の予約を誰も引き取らなかった場合です。残った方が引き取れた分だけ、この金額は小さくなります。318,000円は、埋めきれなかったときの上限だと思っておいたほうがいいです。
そして、この318,000円は、売上から材料費と支給額だけを引いた金額(粗利)の落ち幅であって、最後に手元に残る利益の額ではありません。 家賃も水道光熱費も引いていません。この2つは席が空いても1円も減らないので、この金額に足す必要はありません。ただ、318,000円だけ減った状態で、いままでどおり払い続けることになります。
席が3か月空くと、954,000円になります
求人を出して、応募が来て、面接をして、いまの店の引き継ぎがあって、入店。前回は、どれくらいかかりましたか。
ここでは3か月と置いてみます。
ただし、この3か月に根拠はありません。 動かす起点を作るためだけに置いた数字です。2か月で埋まる店もあれば、半年かかる店もあります。自分の店が前回どれくらいかかったかを思い出して、そこに置き換えてください。
318,000円 × 3か月 = 954,000円
一方、求人にかけているお金のほうも数字にしてみます。月6万円をならしてかけていて、この1年で3人採用できた店なら、
60,000円 × 12か月 = 720,000円 ÷ 3人 = 1人採るのに240,000円
並べると、こうなります。
| 金額 | |
|---|---|
| 1人採るのにかかっているお金 | 240,000円 |
| 席が3か月空いたままだった場合 | 954,000円(約4.0倍) |
「求人費が高い」と言い続けていた店で、実際に高かったのは空いている時間のほうだった、ということが起きます。掲載プランを1つ上げるかどうかで悩んでいる間に、318,000円が過ぎていきます。
「いまいる子たちで埋めるから大丈夫」のあいだに、先に減るのは予約の枠です
ここからは、計算の外側の話です。店に立っていないと見えない部分で、この話が一番大きいところです。
「いまいる子たちで埋めるから大丈夫」は、いつまで本当でいられますか。
辞めた方の予約は、残ったスタッフが引き取ります。しばらくは、みんな少し早く動いて、なんとか回ります。売上も、ぱっと見は落ちません。オーナーは「思ったより大丈夫だった」と思います。
先に効いてくるのは、売上ではなく予約の枠のほうです。
客数は、立っている人数に引きずられます。1人減れば、予約に出せる枠がその分減ります。枠が減れば、お客様が取りたい日に取れなくなります。取れなかったお客様は、別の日を探すか、他の店に行きます。出てくるのは来店間隔の延びではなく、失客です。 そして失客は、辞めた翌月の売上には出ません。
そのうえ、引き取った分だけ1人あたりの予約が詰まります。詰まったとき、次回予約の声かけが後回しになっていませんか。「じゃあまた連絡します」で帰るお客様が増えると、空き枠が減っているところに、次回予約も取れていない状態が重なります。
そしてもう1つ。1人抜けた分の負荷は、残った人にそのまま乗ります。 休憩が取れない日が続く、閉店後の練習時間が取れなくなる。これは気持ちの問題ではなく、1日の中で使える時間が足りていないという話です。その状態が続けば、次の退職の理由になり得ます。 何か月で、何人に一度そうなるかは、店によって違います。
だから、318,000円という数字を出す意味は「損した額を知る」ことではありません。募集をかける前に、いま何が起きているかを見る順番を作ることにあります。
同じ「1人」でも、雇用の方と業務委託の方では別物です
ここは働き方と契約の話に触れる。雇用か業務委託かは、契約書の題名ではなく働き方の実態で決まる。 金額の出し方が変わるという話であって、契約の形を選ぶ話ではない。実際の契約内容によって変わるので、自分の店の契約書を見て確認してほしい。
さきほど紙の裏に書いた318,000円は、雇用のスタッフを前提にした数字です。席が空けば、支給額240,000円も出ていかなくなります。だから差し引き318,000円になります。
業務委託の場合は、引く金額が変わります。歩合50%・月60万円を作る方であれば、出ていかなくなるのは報酬の300,000円のほうになります。同じやり方で置き換えると、
600,000円 − 42,000円 − 300,000円 = 258,000円
さらに、材料費と席料をどちらが負担する契約かでも変わります。材料費をその方が負担している契約なら、店が失うのは材料費を引く前の金額になります。席料をもらう形なら、失うのは席料の分だけになります。
言いたいことは1つです。雇用の方と業務委託の方を混ぜて「1人あたりの平均」を出すと、この計算は壊れます。 同じ「1人」でも、中身がまったく違うからです。分けて出すこと。 ここだけは面倒でもやったほうがいいです。
辞めると言われた日に、やること3つ
優先順位をつけます。上から順にやります。
- その日のうちに、空席1か月の金額を出す。 売上・材料費・支給額の3つがあれば出ます。5分で終わります。この金額を持っているかどうかで、次の判断の速さが変わります。
- 求人を出す前に、求人票の抜けを1つだけ直す。 前回と同じ求人票をそのまま出すと、前回と同じ結果になります。応募する人が知りたいのに書いていない項目は、自分では気づけません。1つでいいです。
- 予約に出せる枠を、先に組み直す。 1人減った分の枠をそのままにしておくと、取りたい日に取れないお客様が出ます。埋まるまでの間だけでも、シフトと枠の出し方を見直します。
やらないこと:紹介手数料の高い媒体を、金額を出す前に追加すること。
「早く埋めたい」は正しいです。ただ、954,000円という数字を持たずに追加すると、「高いから」で途中でやめて、結局どちらも中途半端になります。数字を出してからなら、30万円の紹介手数料を払う判断も、堂々とできます。
紙の裏の3つに、求人費と採用人数を足すと出る道具があります
入れるのは、この5つです。
- 1人あたりの月の技術売上
- 材料費率
- 1人あたりの月の支給額
- 求人にかけているお金(月)
- この1年で採用できた人数
サロン電卓の「求人費・空席」に、この5つを入れます。 出るのは、ここまでの数字です。画面のいちばん上に出るのが、1人採るお金です。
材料費率の欄には、最初から7%が入っています。自分の店の率が分かるなら、そこだけ書き換えてください。
求人費が月60,000円・この1年で3人採用・スタッフ6名の店なら、1人採るのに240,000円、席が1つ空いている1か月を318,000円と出します。次の方が入るまでの月数を動かすと、その間に店に残らなかった金額も一緒に変わります。3か月なら954,000円、1人採るお金の約4.0倍です。
求人費・空席(サロン電卓): https://salondentaku.com/apps/job-cost-seat
この道具には、何か月いてほしいかという目標の線は入っていません。 それは店ごとに決めることで、画面が決めることではないからです。
そして、この数字は毎年変わります。採用できた人数が変われば1人あたりの金額が変わりますし、平均売上が上がれば空席の1か月も重くなります。1回出して終わりにはなりません。 1年に一度でいいので、同じやり方で出して並べてみると、自分の店の採用が良くなっているのか悪くなっているのかが、初めて見えます。
出しておくと、次に「辞めます」と言われた日の夜が、少しだけ短くなります。
1人採るのにかかっているお金と、席が1つ空いている1か月の金額を計算します。次の方が入るまでの月数を動かすと、その間に店に残らなかった金額が出ます。
登録なしで、無料でお使いいただけます。
- スタッフが1人辞めた。空いたままの1か月は、いくら持っていくのか求人費は入れた。それなのに、採用がなかったことになっている。空いている欄が、もう1つありませんか。
- 1人増やすか迷っている。その方の売上が人件費を上回るのは、何か月目か上回るのは3か月目、かけたお金が戻りきるのは5か月目。耐える期間を3か月で見積もっていませんか。
- 人が足りない。足りていないのは、本当に人のほうかセット面6・スタイリスト4人なら空き席は2つ。埋まれば月160人・1,280,000円。席のほうが少ない店では、この金額は出ません。
- 掲載終了のメールが届きました。写真とキャッチコピーを直せば、応募は来るでしょうか掲載が終わって、次は写真を変えようか、キャッチコピーを直そうかと考えている方へ。応募する人が止まっているのは、そこでしょうか。
- 📄 求人票の穴つぶし求人を出す前に、応募する人が知りたいのに書いていない項目を点検します。
サロン電卓には、いま35本の道具があります。道具の一覧を見る →