← 読みものの一覧に戻る

最低保証を月21万円に上げます。歩合40%の店で、支払いが増えないのは月いくら売る方からでしょうか

2026年10月11日

美容室の話です。スタイリストは3人、1店舗。3人とも雇用です。

お給料は、最低保証と歩合を比べて、高い方を払っています。最低保証は月20万円。歩合は、その方の技術売上の40%です。

最低保証という言葉は、ここでは雇用の方のお給料について使っています。

金額と率は店によって違います。ここでは一例として、この店の数字で計算します。金額はすべて税抜です。

この最低保証を、月21万円に上げることにしました。

3人に1万円ずつで、月3万円。そう見積もっていました。

ところが、歩合のほうが高い月は、最低保証を上げても支払いは変わりません。変わる月と、変わらない月があるはずです。

みなさんの店では、技術売上がいくらのところで分かれるのか、すぐに言えるでしょうか。

この記事は、支払いが変わる月と変わらない月がどこで分かれるかに答えます。あわせて、赤字にならない客数がどう動くかも出します。

境目は、お一人の技術売上が月525,000円のところです

先に答えを書きます。

技術売上が月525,000円以上の方は、最低保証を21万円に上げても、支払いは1円も変わりません。

境目は、最低保証を歩合率で割ると出ます。

  • 上げる前 200,000円÷40% → 500,000円
  • 上げた後 210,000円÷40% → 525,000円

525,000円の40%は、ちょうど210,000円です。歩合と最低保証が同じ金額になる技術売上が、境目です。

技術売上がこの金額に届かない月は、歩合が最低保証を下回ります。その月に支払われるのは、最低保証のほうです。

届いている月は、歩合のほうが支払われます。最低保証がいくらでも、金額は同じです。

ここまでの金額と率は、例として置いた値です。ご自分の店の数字に置き換えて読んでください。

増える金額は、0円、6,000円、1万円の3通りに分かれます

お一人の技術売上を3つ置いて、上げる前と後を並べます。

歩合は、技術売上の40%です。510,000円なら204,000円、600,000円なら240,000円。これと最低保証を比べて、高い方が支払われます。

月の技術売上上げる前の支払い上げた後の支払い増える金額
480,000円200,000円210,000円10,000円
510,000円204,000円210,000円6,000円
600,000円240,000円240,000円0円

1万円がそのまま増えるのは、技術売上が500,000円以下だった方だけなのです。

500,000円と525,000円のあいだの方は、増える金額が1万円より小さくなります。上げる前から、歩合が20万円を超えているためです。

3人の先月が、ちょうどこの表の3つだったとします。店から増える支払いは、3人合わせて16,000円です。見積もった3万円ではありません。

3人とも600,000円の月なら、増えるのは0円。3人とも480,000円の月なら、3万円です。

増える金額は、月ごとに、0円から3万円のあいだで動きます。

支払いが増えるのは、技術売上が境目に届かなかった月です

売上の多い月は、支払いが変わりません。それなら店の負担は軽い、と読みたくなります。

ここは、そう読まないでください。

上げた分が出ていくのは、その方の技術売上が境目に届かなかった月です。

3人とも届かなかった月は、店の売上も少ない月です。その月に、多いときで3万円が出ていきます。

そこで、赤字にならない月商のほうも出しておきます。この金額を、この記事では線と呼びます。

この店の家賃は、共益費込みで月35万円。水道光熱や広告などのその他が、月20万円です。

平均単価は8,000円。材料費は、売上の7%と置きました。

線を出すときは、3人とも最低保証が支払われるとして計算します。理由は、式のあとに書きます。

家賃とその他を合わせて、月55万円。最低保証は3人分で、上げる前が60万円、上げた後が63万円です。売上からは先に材料費の7%が出ていくので、残りの93%でこれをまかないます。

  • 上げる前 (55万円+60万円)÷93% → 月商1,237,000円 → 月155人
  • 上げた後 (55万円+63万円)÷93% → 月商1,269,000円 → 月159人

月商は、千円の単位で切り上げています。客数は、その月商を平均単価の8,000円で割り、1人に満たない分を切り上げた人数です。

この月商を3人で割ると、お一人41万円から42万円ほどです。境目に届かないので、3人とも最低保証で計算しています。

この店では、売上の多い月の支払いは変わらないまま、赤字にならない線が4人ぶん上がるのです。

この線は、3人の技術売上が同じだとして出しています。お一人でも境目を超える方がいると、線はこれより上がります。

固定給に歩合を上乗せしている店は、上げた分が毎月そのまま増えます

ここまでは、最低保証と歩合の高い方を払う店の話でした。

固定給に歩合を上乗せしている店には、境目がありません。固定給を1万円上げると、技術売上がいくらの月でも、支払いは1万円増えます。

固定給だけの店については、お給料を上げたあとの線がどう動くかの記事に書いています。

歩合率がお一人ずつ違う店は、境目もお一人ずつ出します。最低保証を、その方の歩合率で割ってください。

この金額には、社会保険の会社負担と残業代が入っていません

0円も、16,000円も、3万円も、最低保証と歩合の支払いだけの金額です。次のものは入っていません。

  • 社会保険と労働保険の会社負担。お給料が上がると、こちらも増えます。増える時期と金額は、店によって違います
  • 残業代。最低保証を上げると、1時間あたりの単価が上がることがあります。歩合のほうが高かった月も、確かめてください
  • 賞与
  • 指名料と、店販の歩合
  • 税金と、借入の返済
  • ご自身の報酬

線の側にも、同じものが入っていません。見込みの金額が分かるなら、家賃とその他の合計に足してから、線を出し直してください。

売上は、技術の売上だけで置いています。店販は入っていません。

最低保証の金額は、時給に直したときに最低賃金を下回っていないかを、先に確かめてください。上げる前の金額も同じです。下回るかどうかは、所定の働く時間と、お店のある都道府県で決まります。

この記事の20万円と21万円は、計算のために置いた金額です。足りている金額として置いたものではありません。

お給料を上げると、社会保険の届け出や、就業規則の書き換えが要ることがあります。上げる前に、顧問の社会保険労務士さんに確かめてください。

業務委託の方の報酬は、この記事では扱っていません。

上げるかどうかは、この計算からは分かりません

この計算は、次のものを見ていません。

  • 来月、お一人ずつの技術売上がいくらになるか
  • 最低保証を上げたあと、3人の働き方や気持ちがどう変わるか
  • 募集を出したときに、人が来るかどうか

そして、いちばん大きい限界を1つ。上げるかどうかを、この計算は決めません。

出るのは、境目の金額と、線の人数だけです。

最低保証は、上げた月から毎月続きます。上げたあとで、店の都合だけで下げられるものではありません。

上げるのか、金額を変えるのか、時期をずらすのか。決めるのは、あなたです。

最低保証を打ち替えるだけで、境目と線を出す道具があります

境目の割り算は、電卓ですぐにできます。手間がかかるのは、線のほうです。

サロン電卓の「損益分岐の月商(いまの店)」は、境目と線を一度に出します。

はじめに、2つ選びます。

  • 「業種」で、美容室。「材料費率」に7が入ります
  • 「歩合の付き方」で、「固定給と歩合の高い方」

「歩合の付き方」は、最初は「固定給に上乗せする」が選ばれています。そのまま進めると、線が月272人と大きく出ます。

次に、数字を7つ入れます。

  • 「家賃」に、350,000
  • 「その他の毎月かかるお金」に、200,000
  • 「スタッフの人数」に、3
  • 「1人あたりの固定給」に、200,000。最低保証の金額は、ここに入れます
  • 「いまの歩合率」に、40
  • 「スタッフ1人あたりの月の技術売上」に、600,000
  • 「いまの平均単価」に、8,000

「1か月の営業日数」には、最初から25が入っています。「その他の人件費」は、空のままで構いません。

歩合の付き方は「固定給と歩合の高い方」が選ばれていて、スタッフの人数3、1人あたりの固定給200,000、いまの歩合率40が入っている
画面の見本です。

入れ終わると、赤字にならない月商は1,237,000円、月155人・1日およそ6.2人と出ます。

毎月これだけ売れば赤字にならない、1,237,000円。平均単価8,000円なら月155人・1日およそ6.2人と出ている
画面の見本です。

「スタッフ1人あたりの月の技術売上」の下には、次の1行が出ます。

1人あたりの売上が 500,000円 を下回ると、最低保証の 200,000円 になります。

技術売上の欄に600,000。その下に、給与額240,000円、店全体の人件費720,000円(3人分)の行があり、さらに下に「1人あたりの売上が500,000円を下回ると、最低保証の200,000円になります。」と出ている
画面の見本です。

これが、上げる前の境目です。

「1人あたりの固定給」を、200,000から210,000に打ち替えてみてください。

月商は1,269,000円、月159人・1日およそ6.4人に変わります。境目は、525,000円に変わります。

「スタッフ1人あたりの給与額」は、240,000円のまま動きません。600,000円の40%が、最低保証より高いためです。

お一人ずつの支払いを見るときは、「スタッフ1人あたりの月の技術売上」を、その方の金額に打ち替えます。

510,000にすると、給与額は210,000円と出ます。

「1人あたりの固定給」を200,000に戻すと、204,000円と出ます。差の6,000円が、この方に増える金額です。

このとき「店全体の人件費」は、3人とも同じ売上だった場合の金額です。3人の合計としては読まないでください。

3人合わせた16,000円は、この道具からは出ません。お一人ずつ出した金額を、手で足します。

今夜やることは1つです。先月の、お一人ずつの技術売上を並べてください。上げたあとの最低保証を歩合率で割った金額に、届かなかった方は何人でしょうか。上げた分が出ていくのは、その方たちの月です。

この記事で使った道具
📊 損益分岐の月商(いまの店)

家賃・人件費・その他から、毎月いくら売れば赤字にならないかを計算します。1日あたりの金額と、平均単価で割った月の客数まで出ます。

登録なしで、無料でお使いいただけます。

この記事に関係する読みもの
一緒に見ておく道具

サロン電卓には、いま35本の道具があります。道具の一覧を見る →