← 読みものの一覧に戻る

メニュー表の前で手が止まる。「何人か減るよね」の何人かに、線はありますか

2026年9月13日

美容室の話です。スタイリスト3名、平均単価8,000円、来店は月300人。月商240万円の店。

閉店後、メニュー表を見ています。

材料も薬剤も上がって、スタッフの給料も上げたい。8,000円を8,800円にしたい。

並んでいる数字の横に、鉛筆でそう書いてみます。書いてはみたものの、そこで手が止まります。

でも、何人か離れる。

去年も、同じところで止まりました。その「何人か」が読めないから、同じことを考えて、そのままになりました。この記事は、その1点だけに答えます。

線はあります。300人のうち、27人までです

先に答えを書きます。

8,000円を8,800円にしたとき、耐えられるのは月27人まで。割合にすると 9.1% です。273人が残れば、店に残るお金は今と同じです。

ここでいう「店に残るお金」は粗利です。売上から材料費だけを引いた金額で、家賃も人件費も引いていません。利益ではありません。 以下、この記事の金額はすべて粗利の話です。

(9.1%を300人にかけると27.3人になります。人は小数で数えられないので、切り捨てて27人です)

(この300人は、1か月の延べ来店数です。名簿に載っている人数ではありません。来店が2か月おきの店なら、名簿の人数はこの倍近くになります)

(ここでの8,800円は、全メニューの平均が上がった場合の話です。1つのメニューだけを上げても平均単価はそこまで上がらないので、そのときは線も狭くなります。上がる分を平均に直してから読んでください)

言い方を変えます。300人が273人になっても、店に残るお金は変わりません。27人までは、減っていい人数です。

数えたことのない数字かもしれません。値上げの話が「何人か減るよね」「まあ減るよね」で終わっていませんか。その「何人か」には、はっきりした線があります。

「1割上げたから、1割減っても同じ」ではありません。9.1%です

ここが、いちばん間違えやすいところです。

8,000円を8,800円にするのは、10%の値上げです。だから「10%減っても同じはず」と考えたくなります。300人の10%で30人。

違います。27人です。

計算はこうです。

値上げ額 800円 ÷ 値上げ後の単価 8,800円 = 9.09%

割る相手が、値上げ前の8,000円ではなく、値上げ後の8,800円です。だから10%より少し狭くなります。

3人の差です。小さく見えます。金額にすると、こうなります。

  • 30人まで大丈夫だと思って、実際に30人離れた場合 → 月の粗利は今より 22,320円 少ない
  • 1年で 267,840円

(材料費率7%で計算しています。この7%は公的な統計ではありません。KUROCOが運営する美容室3店舗で、材料費を売上の7%以内におさえています。その線を、そのまま目安として置いています。他店の平均ではないので、7%を超えていることが悪いという意味にはなりません)

値上げをするかどうかで悩んでいる人が、27万円ぶん甘く見積もったまま決めることになります。「1割上げたから1割」で丸めないでください。

材料費率を変えても、この9.1%は動きません

メニュー表の前で手が止まる理由は、もう1つあります。

「うちは材料費が高いから、値上げしても余裕がない」 — この計算に関しては、当たりません。

材料費率を7%で計算しても、12%で計算しても、20%で計算しても、耐えられる離客率(お客様が離れた割合)は9.1%のままです。

理由は単純です。お客様が1人減ると、その人にかかるはずだった材料費も同時に消えます。売上の側と材料費の側で同じ割合が消えるので、割り算をしたときに打ち消し合います。

だから、値上げをためらう理由に材料費率を持ってこないでください。材料費率が効くのは「何人まで大丈夫か」ではなく、「いくら増えるか」の方です。

  • 材料費率7%、1人も減らなかった場合 → 月の粗利は 223,200円 増える
  • 中身は、1人あたり 744円 の増加です(値上げ額800円から、材料費の分7%を引いた金額)

(材料費率が高い店ほど、この744円は少し小さくなります。それでも、何人まで減っていいかの9.1%は動きません)

27人は上限であって、目標ではありません

ここを取り違えると、値上げをする意味がなくなります。

27人は「ここまでなら損しない」という線です。「27人までなら離れていい」という許可ではありません。

離れた人数によって、店に残る金額はこう変わります。

離れた人数残る人数今と比べて、月の粗利は
0人300人+223,200円
15人(5%)285人+100,440円
27人(9.1%)273人ほぼ変わらない
30人(10%)270人−22,320円

値上げをする理由は、いちばん上の行にあります。1人も減らなければ月に22万円、5%減っても月に10万円。1年で120万円です。

そして、27人の行を見てください。ここまで離れても、マイナスにはなりません。 値上げをためらう理由が「損をしたくない」なら、その損は、300人のうち27人を超えて離れたときに初めて始まります。

実際に何人離れるかは分かりません。分かるのは、来店が一巡したあとです

正直に書きます。

「8,800円にしたら、実際に何人離れるのか」に答えられる数字は、この記事にも、このあとに出てくる道具にも、ありません。

来店の間隔、担当者との関係、周りの店の価格、その値上げをどう伝えるか。全部で変わります。店によって違います。ここに「一般的には5%です」と書いてある記事があったら、その5%がどこから来たのかを確かめてください。

答えられるのは、もう片方だけです。何人までなら損しないのか。その線が27人だと分かっていれば、決められます。

線を知らないまま「何人か減るよね」と言っているうちは、去年と同じところで止まります。

では、値上げをしたあと、離れたかどうかはいつ分かるのか。

値上げの結果は、翌月には出ません。

お客様の来店が2か月おきなら、値上げ後の価格を見るのは2か月後です。3か月おきの方は3か月後です。全員が新しい価格を1回ずつ見終わるまで、離れたかどうかは分かりません。

だから、値上げをした翌月に客数が落ちていなくても安心はできませんし、落ちていても慌てないでください。見るのは1か月ではなく、来店が一巡するまでです。 自分の店の来店の間隔がだいたい何か月かを思い出して、その月数ぶん並べてから判断してください。

そして、その間に見るのは客数ではなく粗利です。客数は減っても、粗利が保てていれば、その値上げは成立しています。

8,800円のほかも試せます。3つ入れるだけで出す道具があります

ここまでやったのは、割り算1回です。値上げ額を、値上げ後の単価で割るだけです。それでも、上げ幅を何通りか試すとなると、そのたびに電卓を出すことになります。

サロン電卓の「料金改定シミュレーター」に、3つ入れてください。

  • 今の平均単価
  • 1か月の来店客数
  • 値上げ後の平均単価

出るのは、耐えられる離客率と、何人まで減っていいかです。8,000円を8,800円にして月300人なら、9.1%・27人まで・273人が残ればよい、と出るのがこの画面です。

材料費率の欄には、最初から7%が入っています。業種が美容室のときの目安です。自分の店の率が分かるなら、そこだけ書き換えてください。材料費率が入っていると、粗利が月いくら増えるかも並びます。 この欄を変えても、上の9.1%は動きません。

登録なしで使えます。値上げ後の単価を何通りか入れ直すと、耐えられる人数がその場で入れ替わるので、いくら上げるかを決める前に触ってみてください。

値上げしたあとに毎月いくら売れば赤字にならないかは、別の道具(損益分岐の月商)で出します。

この記事で使った道具
📈 料金改定シミュレーター

値上げを検討するとき、何%のお客様が離れるまでなら粗利が減らないかをその場で計算します。

登録なしで、無料でお使いいただけます。

この記事に関係する読みもの
一緒に見ておく道具

サロン電卓には、いま35本の道具があります。道具の一覧を見る →